秩父・法雲寺に伝わる「龍の骨」とは?法雲寺の伝説を実際に調査してきた
※この記事にはアフィリエイト(商品)リンクが含まれている場合があります。
由緒ある神社やお寺、幻想的な秘境などが点在している観光地といえば、埼玉県の「秩父」が挙げられる。
秩父には古くから多くの伝説や民間伝承などが語り継がれており、特に法雲寺と呼ばれるお寺では、龍の骨や天狗の爪などが祀られている。
これらは、700年以上前にこの地に運ばれた秘宝であり、それらにまつわる不思議な伝説が今なお残されているのだ。
今回はそんな秩父札所30番にあたる、法雲寺を現地調査してきたので、この地の歴史と共に解説していきたいと思う。
Table of Content
秩父札所三十番・法雲寺とは?

秩父鉄道の奥側に位置する法雲寺は、13世紀中期頃に「道隠禅師(どういんぜんし)」と呼ばれる人物により創建された。
また、秩父には「秩父三十四箇所」と呼ばれる観音霊場が点在しており、これらを回る「秩父札所巡り」も観光客の間で人気を博している。
そして、この秩父札所の30番目に当たる場所がこの法雲寺なのだ。

この法雲寺は、和風な美しさを魅せる池、秋には真っ赤な紅葉で染まる境内などが特徴的だ。
秩父・法雲寺に伝わる秘宝

美しい境内を持つ法雲寺だが、最大の見どころは、このお寺に古くから伝わる下記の秘宝だ。
- 楊貴妃の鏡(ようきひのかがみ)
- 龍の骨
- 天狗の爪
- 如意輪観音像(にょいりんかんのんぞう)
上記の法雲寺に伝わる秘宝には、龍や楊貴妃に関する奇妙な民間伝承が語り継がれており、その痕跡をここで辿ることができるのだ。
実際にこれらを現地で調査してきたので、次の章で詳しく解説していく。
龍の骨

法雲寺に伝わる秘宝の1つ、「龍の骨」。
大きさは約20センチ程だが、牙を含む顎の部分のみが展示されている。
言い伝えでは、かつて法雲寺周辺の深谷と呼ばれるエリアに悪龍が住み着いていたのだが、後にこの悪龍は観音を信仰し、善龍となったのだとか。
この龍は法雲寺が造られると同時に、天へ昇天したらしく、その際にこの骨を庭先残したと伝えられている。
科学が解き明かす、龍の骨の正体とは?
科学的な見解では、かつて秩父は海底にあったと推測されており、この化石も鮫などの魚類の物ではないかと考えられてる。
もしそれが本当だとすると、とんでもなく古い時代の物になるだろう。
ちなみに、この龍の骨は秩父市指定文化財に登録されており、これを目的に法雲寺に訪れる人もいるそうだ。
天狗の爪

長さ約4センチ、トライアングル型の形をした「天狗の爪」。
法雲寺の裏山から出土したらしく、日本の妖怪「天狗」の爪として保管されている。
天狗といえば、東京の御岳山や高尾山にも数々の伝説が残っており、その目撃情報も昔から多数報告されている。
関連記事:天狗は1400年前に実在した妖怪?その正体と高尾山に眠る伝説を解説
天狗は山岳信仰と結びつきが非常に強い妖怪だが、かつての秩父の集落的地域でも天狗伝説が語られていたのかもしれない。
天狗の爪 科学的見解は?
ちなみに、日本の民俗学・考古学に詳しい近藤和吉氏によると、こちらは400万〜2500万年前に生息していた古代種「カルカロドン」という鮫の歯と鑑定されているそうだ。
かつて海底にあったとされる秩父だが、これが山の中で発見されたため、天狗の爪として語られてきたと推測されている。
楊貴妃の鏡(唐鏡)

法雲寺の歴史と深い関係を持つオブジェクト「楊貴妃の鏡」。
かつて愛知県・熱田神宮の神職の夢に異国の美少(楊貴妃)が現れ、この鏡を渡したと語られている。
それが後に秩父に運ばれ、法雲寺が建てられた際に奉納されたといわれている。
そして、この鏡が「楊貴妃」と名付けられている背景には、法雲寺に奉納されている如意輪観音像と深い関係があるからだ。
如意輪観音像
法雲寺の奥には、如意輪観音像と呼ばれる仏像が安置されている。
こちらは残念ながら撮影禁止のため、画像などは載せられないが、その姿は中国の楊貴妃を模しているといわれているのだ。

楊貴妃とは、中国(唐)の第6代皇帝である玄宗の妃であり、絶世の美女として知られている。
記録では、楊貴妃は755年に起きた安禄山の乱(あんろくざんのらん)から一年後に殺害されてしまう。
秩父市教育会発行の著書「秩父の伝説(2007)」によると、楊貴妃の亡き後、夫である玄宗皇帝が彼女を思い、仏像を彫ったと述べられている。
その時に造った作品こそ、この如意輪観音像なのだとか。

※法雲寺では、普段は如意輪観音像の小さなレプリカを展示しており、本物は毎年4月18日の行事の際にしか観ることができないので、注意が必要だ。
法雲寺の秘宝は中国から来た?
如意輪観音像の完成から時が経ち、法雲寺の創建者・道隠禅師がこれらを中国からもたらしたと伝えられている。
こちらの住職様に直接お話を聞いてみたところ、下記のように語り継がれているのだとか。
かつて法雲寺の宗派(系列)の大元が中国の使者との交流があり、その影響で観音像がここにたどり着いた。
一説では、これまで紹介した秘宝なども、その時一緒に運ばれてきたのではないかと推測されている。
その話が伝承として形を変え、龍や天狗の伝説になったのかもしれない。
法雲寺の秘宝・まとめ
今回紹介した法雲寺の秘法は、非常にロマンを感じさせる展示品であった。
それらの持つ伝説などのバックボーンはもちろん、科学的な分析によって、かつての秩父地域の姿や生物などを想起させる重要なアイテムともいえる。
法雲寺自体も非常に美しいお寺なので、他のスポットと共に是非とも立ち寄ってみてもらいたい。
Comments