【大深山遺跡】日本一標高の高い縄文時代の遺跡を長野県で調査してきた

日本には、青森県の三内丸山遺跡や秋田県の大湯環状列石など、東日本を中心に数多くの遺跡が分布している。

そんなロマン溢れる古代の遺跡群だが、長野県の奥地に「大深山遺跡（おおみやまいせき）」と呼ばれる、ユニークかつ壮大な歴史を誇るスポットがあることをご存知だろうか？

この周辺の野辺山、川上村と呼ばれるエリアは1,300m近い標高を持つため、大深山遺跡は日本で最も標高の高い縄文時代の遺跡といわれている。

今回は、あまり知られていない「大深山遺跡」の概要や歴史、その見どころなどを解説していきたいと思う。

長野県・大深山遺跡の歴史と文化

大深山遺跡の見どころを解説する前に、まずはその概要と歴史を紹介していく。

大深山遺跡とは、縄文時代中期に存在したとされる集落で、その歴史は約4500年前にも遡るといわれている。

元々は「大深山遺跡保存会」と呼ばれる団体により、1959年（昭和34年）から約37年間の歳月を費やした発掘調査が行われ、下記のような出土品が掘り起こされた。

• 住居跡（51箇所）
• 土器（下記と併せて数万点）
• 石器

これらの出土品は現在、付近の川上村文化センターに展示されており、また大深山遺跡は1966年に国の重要史跡として文部省より指定されている。

ちなみに、大深山遺跡のある川上村は標高1,300メートルに位置しているため、日本で最も標高の高い場所にある縄文遺跡としても知られている。

大深山遺跡の所在地「川上村」とは

大深山遺跡があった川上村という地域には、他にも縄文時代の遺跡が村内37箇所にて確認されているが、それより遥か昔の約2万年前（旧石器時代）には既に人が住んでいたと考えられている。

しかし、川上村近辺は標高が非常に高く寒冷なため、その生活は大変厳しいものだったのだとか。

確かに環境的に稲作などは難しい地域だったが、それと同時に人々がここに定住するメリットもあった。

川上村文化センターによると、この付近は環境的に稲作などを行うことは不可能だったが、木の実などの堅果類の採取や動物の狩猟などは盛んに行われていたそうだ。

具体的な例を挙げると、この付近では下記のような食料が豊富に確保できたと予想されている。

• 鹿、イノシシ
• 川ます
• わらび、ふき、ぜんまい
• 野ぶどう、木の実
• キノコ、山芋

実際にこの近辺では今でも鹿が出没したり、キノコが生えている様子なども見受けられる。この環境に目をつけた当時の縄文人たちは、このエリアを衣食住の場所とし、独自の社会を形成したのだとか。

その形跡が色濃く残っている場所こそが、「大深山遺跡」である。

ちなみに、現在の川上村では「名物・川上そば」が有名だったり、かつて絶滅危惧種にも認定されていた「川上犬」などが生息する地域として知られている。

大深山遺跡の現地の様子と見どころ

ここからは、実際の「大深山遺跡」の様子を紹介していきたい。

大深山遺跡は緑豊かな自然で囲まれており、すぐ隣のエリアはゴルフの練習場所のような場所となっている（おそらく地元住人が使用）。

自然の奥地だけあって、周辺エリアはかなり静かで観光客などもいない。

そして、最寄りの駐車場を少しだけ歩くと、かつて発掘調査が行われた大深山遺跡と、当時の生活の様子を再現した居住跡を観ることができる。

建築の構造も当時の様子を再現しており、下記のような造りとなっている。

• 六本のカツラの木を柱として直立
• それらを囲うようにドーム状に枝を配置
• 周りを藁で囲う

中央には明かりを灯す炉が設けられ、それを囲う形で一世帯5~6人ほどで生活していたそうだ。

もちろん、こちらは発掘後に造られたレプリカだが、当時の竪穴式住居の様子を視覚的に確認することができる大変貴重な遺跡となっている。

ちなみに、このエリアからは他にも石器や土器なども数多く発掘されたが、それらは近くの川上村文化センターに展示されている。

発掘品が見たいなら「川上村文化センター」

大深山遺跡から5分ほど車を走らせると、川上村文化センターへアクセスすることができる。

当時、大深山遺跡では数万点の出土品が発掘されたといわれているが、貴重な出土品はこの文化センターにて一般公開されている。

出土品の解説はもちろん、この川上村近辺での人々の暮らしや特徴、歴史なども解説されており、ローカルな考古学を存分に楽しむことができる。

ちなみに、川上村に人々が現れ始めたのは2万年以上前の旧石器時代といわれており、その長い歴史の中で下記のような特徴を育んだとされている。

• 絶滅寸前だった「川上犬（県の天然記念物）」が現在も存在する
• 寒さの厳しい農業地帯の中で、「名産・川上そば」が編み出される
• 昭和初期ごろから野菜の生産が本格化
• 弥生時代以降の遺跡も村内に22箇所存在する（ほとんどは平安時代のもの）
• 毎年正月には「道祖神祭り」が行われる
• 多くの修験道が訪れた「金峰山（標高2.595m）」がある
• 武田信玄によって金山が開発され、後に江戸幕府によって江戸時代中期まで採掘が行われた
• 現在も全国1位のカラマツの生産地（日本のカラマツはほぼ川上産で、ヨーロッパにも輸出されている）

上記のように、川上村一帯の歴史や民族学的な情報がこの文化センターに詰まっているのだ。

また、川上村のある長野県は道端に「道祖伸」というオブジェクトを設置するという信仰が色濃く残っており、この川上村でのその文化がお祭りの一部として受け継がれている。

川上村文化センターでは、大深山遺跡だけでなく、この地域の興味深い歴史も辿ることができるので、ぜひ訪れてみてほしい。

大深山遺跡への交通情報

大深山遺跡は、交通のアクセスが非常に悪いため、車移動が主な交通手段となる。

電車でも行けないことはないが、その場合は徒歩アリの長旅になると思った方がいいだろう。例えば新宿から最短で大深山遺を目指すルートとしては、下記の通りだ。

→JR中央本線あずさ49号 松本行き 乗車

→小淵沢駅 下車（約2時間）

→JR小海線 小海行き乗車

→信濃川上駅 下車（約40分）

→川上駅（バス）川上村営バス梓山方面行き 乗車

→大深山中央 下車（約8〜10分）

→大深山遺跡まで徒歩で移動（約20分）

乗車時間は約3時間15分で、電車乗り換え1回、運賃合計5,980円かかるので、車移動をおすすめする。

長野県 大深山遺跡・まとめ

大深山遺跡は世間一般的にあまり広く知られていないが、考古学のロマンが詰まったスポットであることは間違いないだろう。

ちなみに、こここら10分程で「野辺山」という、非常にキレイな星空を観ることができるスポットへとアクセスできる。また、国立天文台が設けられていたり、獅子岩という絶景スポットなども点在している。

大深山遺跡とセットで訪れてみるのもオススメだ。