人魚の肉を食べた八百比丘尼の罪とは?その伝説を福井へ現地調査してきた
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日本には古くから数多くの人魚伝説が残っている。
特に有名なものでいえば、人魚の肉を食べて不老長寿となった八百比丘尼(やおびくに)の伝説は日本各地に点在している。
そんな八百比丘尼が実在したかもしれぬ土地が福井県小浜市にあることをご存知だろうか?
今回は小浜市の八百比丘尼伝説を現地調査してきたので、その歴史や伝承、現地の様子をレポートしていきたいと思う。
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八百比丘尼の出生
そもそも八百比丘尼とは一体何なのかを福井県小浜市の例を用いて詳しく解説したいと思う。
時をさかのぼること白雉五年(654年)、若狭の勢村(現在の小浜市)に高橋権太夫家にという長者に娘が生まれた。
その娘は知恵と人徳が備わった優美な子だったらしく、世間からは神仏や仏の再来とまで言われたほどの才覚の持ち主だったそうだ。
そんな娘が16才の時、父が海中の国(竜宮)に招かれ、そのお土産として持ち帰った「人魚の肉」を食べたところ、幸か不幸か不老長寿となったそうだ。
120才となった娘
その後、年を取ることなく120才を迎えた娘は、髪を切り比丘尼姿の僧形となり、諸国を旅してまわったのだとか。
旅の途中で樹木等の緑化技術を教えまわったり、仏閣を建立、修繕したりなど、人々に神の信仰と道徳を説いてきたといわれている。
上記のような活動を途方もない年月をかけて行ってきたのだ。
800才になった娘
そんな彼女も1449年、京都の清水にて諸国巡遊の旅を止め、生まれ故郷である若狭国(現福井県小浜市)に帰ってきたのだとか。
その後、800才を迎えた彼女は空印寺(寺院)の境内にある「大岩窟」という洞窟の手前に白椿を植え、自らはその洞窟に入ることにしたという。
つまり、生きたまま洞窟に身を隠し、最期を迎えることにしたということだ。
その理由は明らかになっていないが、彼女は一人洞窟の中に入り、その一生を終えたのだとか。
後に人々は彼女のことを長寿の姫や八百姫、八百比丘尼と呼ぶようになったといわれている。
日本に散らばる八百比丘尼の伝説
ここまで八百比丘尼の歴史を福井県の伝承を基に語ってきたが、彼女の伝説は東北や四国、九州など中心に日本各地で語り継がれている。
各地域によって脚色が異なるが、彼女が人魚の肉らしきものを食べて不老長寿の能力を得るという話は大体共通している。
ちなみに、八百比丘尼伝説は日本の平安時代から鎌倉時代にかけて広まったと言われている。
特に、不老不死に関する物語は、当時の貴族や武士たちの間で非常に興味深いテーマであり、こうした伝説が広まる要因の一つとなったのではないだろうか。
特に福井県は古くから日本海に面した交易の要所であり、様々な文化や信仰が交わる場所であった。
こうした背景が、八百比丘尼の伝説を生み出す土壌となった可能性が高い。人魚の存在や、異界との接触を象徴する物語は、海に囲まれた地域ならではの信仰と結びついている。
また、伝説になぞらえて考えるのであれば、もし八百比丘尼の不老長寿伝説が本当に起きた実話だったとしたら、彼女が各地を旅した際に自身のバックボーンを広めたのかもしれない。
八百比丘尼の伝説を福井県にて現地調査
先ほどからお伝えしている通り、八百比丘尼の伝説に最も深く根付いている土地は福井県小浜市(若狭)で間違いないだろう。
ここには八百比丘尼のゆかりの地が今なお存在しているのだ。
そこで今回は小浜市を実際に訪れて現地調査してきたので、ここからはその様子を詳細に書いていきたいと思う。
小浜市
今回調査してきた小浜市は若狭湾に面している場所であり、海水浴場などもあるようで、付近には人魚の像も立っている。
説明書きによると、遠い南の人魚(ジュゴン)が黒潮に乗ってこの小浜の海に迷い込んだ、という伝承があるようだ。
また、八百比丘尼が800年間も若々しく生きながらえたという伝承になぞらえ、されに長寿の理想郷としてを願いを込めて、この人魚の像を設置したといわれている。
空印寺の入定洞岩窟
今回の目玉スポットであり、八百比丘尼の伝説を身をもって感じることのできる場所が、この空印寺だ。
寺の正確な創建年は定かではないが、かつて八百比丘尼が入洞し、最期を迎えたといわれている洞窟が境内に存在する。
洞窟横には、八百比丘尼と思われる石像が置かれており、洞窟は自体は大人が屈んで入れるか否かぐらいの大きさだ。
入口には鍵がかかっており、入洞はできないが、奥には文字が彫られた秘跡と木製のようなオブジェクトが設置されている。
文字は恐らく「八百比丘尼」と書かれているように見える。
もし、仮に八百比丘尼がここに本当に入洞したとしたら、彼女は不老長寿になったことをどう思って最期を迎えたのかが気になるところだ。
ちなみに、付近の説明書きによれば、この洞窟にてお祈りすれば必ず不思議な霊験が現れると伝えられている。
ここで八百比丘尼の壮大な物語が完結したのだと考えると、ほんの少しロマンを感じるような場所ではある。
八百姫神社
八百姫神社(やおひめじんじゃ)は、福井県小浜市にある神社で、八百比丘尼(やおびくに)伝説と深く関わる場所の一つだ。
この神社は、長寿と健康を祈る場所として知られており、八百比丘尼を八百姫として祀っている。この神社は彼女の魂を鎮め、長寿を象徴する聖地としても尊ばれているのだ。
長寿や健康を願う人々にとって非常に縁起の良い神社として親しまれているのだとか。
緑豊かな自然に囲まれた神社は、どこか独特な雰囲気と歴史をかもし出しているように見える。
八百比丘尼に残る謎
これまで八百比丘尼ゆかりの地を紹介してきたが、今なお自分の中で下記のような謎が残っている。
それは彼女が不老長寿になるきっかけを作った「人魚の肉」だ。
高橋権太夫家(彼女の父)が手に入れた「人魚の肉」と「竜宮」の存在は浦島太郎を彷彿とさせる内容となっている。
浦島太郎は竜宮城での体験を経て老いてしまうが、八百比丘尼は逆に老いることがないという対照的なテーマが描かれているのも興味深い。しかし、老いることがない特性も見方を変えれば、人魚の肉を食べた罪であるという考え方もできる。
また、ヨーロッパの神話にも、エリクサーや不老不死の薬を求める物語が多く見られるが、八百比丘尼の伝説は、それらと異なり偶然の結果として不老不死を手に入れてしまう点が他の物語とは大きく逸脱しているのだ。
もしかしたらこの八百比丘尼の伝説は浦島太郎や他の童話からインスピレーションを受け、当時の人々の不老長寿への関心が作りだした童話なのかもしれない。
しかし、これがただの伝承や物語だということも完全に否定はできないだろう。人魚と人間の関わりと伝承はまだまだ深いところまで調べてみる価値はありそうだ。
小浜市周辺のおすすめ異界スポット
ちなみに、北陸、近畿地方には八尾比丘尼の伝説以外にも織田信長ともゆかりのある異界スポット「新開の森」などもある。
関連記事:新開の森はなぜ「シガイの森」と呼ばれるのか?歴史や心霊スポットとしての噂を現地調査してきた
周辺とは言いつつ、移動には3時間ほどかかるが、近畿方面に行かれる人には訪れてもらいたい場所の一つだ。
こちらも現地調査しているので、興味のある方は是非チェックしてもらいたい。
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